抄録
コケ植物はセン類、タイ類、ツノゴケ類に分類されている。コケ植物のミトコンドリアゲノムの構造はタイ類のゼニゴケで報告されているが、セン類のヒメツリガネゴケでは4つの遺伝子(nad2、nad5、nad7、cox3)しか報告されておらず、ミトコンドリアゲノムの全体像は分かっていない。本研究ではヒメツリガネゴケのミトコンドリアゲノムの構造解析を行った。報告されているヒメツリガネゴケの4つの遺伝子とゼニゴケの遺伝子(cox1、cox2、nad1、nad3、nad4L、nad6、atp6、atp9)の特異的な配列より作製したプライマーを用い、考えられるすべてのプライマーの組み合わせで100通り以上のLA PCR法を行い、7つのDNA断片を得た。これらを用いてcox1からcox3遺伝子間(nad7、nad3、nad1を含む約30 kbp)とcox2からnad5遺伝子間(nad6、nad2を含む約20 kbp)の各々のコンティグのシークエンスを行った。同定した遺伝子では近縁のゼニゴケとのアミノ酸配列はほぼ一致したが、DNA配列ではイントロンの数やその入る場所が異なるものがあった。今後は、さらにヒメツリガネゴケのミトコンドリアゲノムの構造解析を進めていく予定である。