抄録
私たちは、ヒャクニチソウのin vitro管状要素分化誘導系とそれを基に作成したcDNAマイクロアレイを用いて維管束分化・形成に関わる遺伝子について網羅的な解析を行ってきた。今回は、in vitro管状要素分化過程の中期に発現が一過的に上昇する遺伝子群の中から見いだされた植物特有の転写制御因子であるNACドメインタンパクをコードするヒャクニチソウ遺伝子(Z567)のシロイヌナズナのホモログの機能解析について報告する。シロイヌナズナゲノムからZ567ホモログを探索したところ、相同性の高い7つの遺伝子VND (Vascular related NAC-Domain protein) 1~7遺伝子が見いだされた。まず、プロモーター解析を行った結果、VND6遺伝子以外はシロイヌナズナの根の維管束において発現が観察され、そのうち、VND5とVND7遺伝子に関しては未成熟な道管に強い発現が認められた。さらにVND遺伝子の過剰発現体を作成したところ、VND7遺伝子過剰発現体の根の皮層などに異所的な道管分化が観察された。このことによりVND7遺伝子が道管分化の正の制御因子であることが強く示唆された。