日本植物生理学会年会およびシンポジウム 講演要旨集
第45回日本植物生理学会年会講演要旨集
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水生食虫植物ムジナモ(Aldrovanda vesiculosa L.)の消化腺毛の機能と微細形態
*厚沢 季美江新田 浩二松島 久諸橋 征雄金子 康子
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p. 137

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抄録
ムジナモは水面下に浮遊する食虫植物であり、ミジンコなどの水生小動物が捕虫葉表面の感覚毛に触れると、迅速に二枚貝様の葉を閉じてそれを捕える。その後消化腺毛から分泌した消化酵素で獲物を分解し、吸収毛で分解物を吸収すると考えられている。本研究は、in vitroで培養・増殖させたムジナモを用い、特に消化に関わると考えられている消化腺毛の微細形態と機能との関わりを明らかにすることをその目的とした。
培養液中で活発に生育しているムジナモから捕虫葉を切り出し、化学固定または急速凍結固定を行い、超薄切片を作製後、透過電子顕微鏡で観察した。消化腺毛ではラビリンチン壁や層状のER、タンニン液胞が発達していた。セリウムを用いた細胞化学法により、消化酵素の一つである酸性フォスファターゼ活性が、成熟葉の発達した消化腺毛の細胞壁とERに局在していることが観察された。これに対し、未成熟な捕虫葉の消化腺毛では、細胞化学的にフォスファターゼ活性の存在は確認できなかった。成熟葉と未成熟葉における酸性フォスファターゼ活性のこのような違いは、葉の粗抽出液中のフォスファターゼ活性を調べることによっても確認された。
さらに、ムジナモ捕虫葉にミジンコを捕食させ、その後の消化腺毛の微細構造変化と酵素活性の局在性の変化について検討した。捕食後の消化腺毛では、タンニン液胞やERの形態、細胞骨格などに顕著な変化が起こることが観察された。
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© 2004 日本植物生理学会
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