抄録
AtBI-1 (Arabidopsis Bax inhibitor-1)は過剰発現させることにより、酵母やシロイヌナズナでBaxによる細胞死を(PNAS, 2001)、またタバコBY-2細胞でH2O2およびSAによって引き起こされる細胞死を (Plant Cell, 2004) 抑制する。AtBI-1はERに局在する膜タンパク質であり、C末端の14アミノ酸は細胞質側に局在すると考えられている。この14アミノ酸を欠損させても局在には影響がないが、BaxやH2O2による細胞死を抑制する機能が失われる。このC末端領域には動物や植物で保存されている、正や負の電荷を持つアミノ酸が存在している。また、この領域がcoiled-coil構造をとることが推測された。これらのアミノ酸や構造が細胞死抑制活性に関っているのかを調べるために、アミノ酸置換変異体の解析を行ったところ、電荷をもつアミノ酸を非電荷や非極性のものにそれぞれ置換しても、細胞死抑制活性は維持された。それに対し、coiled-coil構造をとれなくなった変異体だけが、細胞死の抑制活性を失った。これらのことから、AtBI-1の細胞死抑制活性にはC末端領域のcoiled-coil構造が必須であることが示唆された。また、酵母2-hybrid法により、AtBI-1がカルモジュリンと結合することを明らかにした。Coiled-coil構造をとれない変異体はカルモジュリンとの結合能も失っていたことから、カルシウムがAtBI-1による細胞死抑制に関与している可能性がある。