抄録
動物のアポトーシス促進因子であるBaxは、植物や酵母にも細胞死を引き起こす。当研究室ではこの現象を利用してAtBI-1 (Arabidopsis Bax Inhibitor-1)遺伝子を単離し、植物内で細胞死抑制因子として機能することを明らかにしてきた。さらに植物細胞の生死コントロールの分子機構を明らかにするため、AtBI-1により機能が抑制される植物由来の細胞死促進因子の単離を酵母を用いて試みた。すなわち、GAL1プロモーターに連結したAtBI-1遺伝子を有する酵母に、シロイヌナズナcDNAライブラリーを導入した。そして、グルコース培地上では生育しないが、ガラクトース培地上で生育する株を単離した。その結果、1クローンが単離され、本遺伝子をcdf1 (cell growth defect factor-1)と命名した。Cdf1タンパク質は258aaをコードする機能未知の因子である。本遺伝子をGAL1プロモーターに連結し、酵母内で発現させると細胞死を誘導し、またその効果はAtBI-1により抑制された。さらに、本因子とGFPとの融合タンパク質は酵母内ではミトコンドリアに、植物細胞内では葉緑体に局在することが明らかとなった。現在、cdf1を高発現する形質転換体の作出を行っており、それらの結果と合わせて、cdf1 による細胞死誘導機構について議論する。