日本植物生理学会年会およびシンポジウム 講演要旨集
第45回日本植物生理学会年会講演要旨集
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タバコ培養細胞BY-2のエリシター誘導性プログラム細胞死過程における液胞の動態の解析
*桧垣 匠郷 達明東 克己朽津 和幸
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p. 141

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抄録
感染シグナルにより誘導される生体防御反応に伴う局所的プログラム細胞死(PCD)のモデル系として、我々は、タバコ培養細胞BY-2が植物病原菌由来のタンパク質性エリシターを認識し、高度に同調的な細胞死を誘導する実験系を構築した(Kadota, Y. et al. Plant Cell Physiol. in press)。死細胞では、細胞の収縮や細胞質の凝集などの形態的な変化が観察されたが、核の凝集や断片化等、動物細胞のアポトーシスに見られる核の形態変化や顕著なDNAの断片化は観察されなかった。本研究では、このPCDの実行機構を明らかにするため細胞死過程における液胞の動態を解析した。液胞内腔に特異的に蓄積する蛍光色素を用いて、細胞死に至るまでの液胞構造を経時的に観察したところ、細胞死に先立って原形質糸が減少し、液胞の構造が変化することが明らかとなった。このような液胞の形態変化は、過酸化水素水を添加して誘導した細胞死では観察されず、感染シグナル誘導性の細胞死に特異的な現象である可能性が考えられる。また、死細胞では液胞内の蛍光が完全に消失しており、細胞死の実行過程で液胞膜の性質が変化した可能性が考えられた。エリシター誘導性プログラム細胞死において、液胞が形態的、生理的に変化する意義について議論したい。
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© 2004 日本植物生理学会
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