日本植物生理学会年会およびシンポジウム 講演要旨集
第45回日本植物生理学会年会講演要旨集
会議情報

シロイヌナズナc-Myb様転写因子のノックアウト変異体が示す細胞質分裂の異常
*伊藤 正樹
著者情報
会議録・要旨集 フリー

p. 152

詳細
抄録
三回の繰り返し構造をMybドメインに持つ動物型のMyb (3Rmyb)は、タバコではサイクリンBのG2/M期特異的転写を規定するシスエレメントに結合し、転写活性を調節する。これらには転写活性化因子として働くNtmybA1およびNtmybA2、転写抑制因子として働くNtmybBがあり、競合的に転写活性を制御することをこれまでに報告している。シロイヌナズナのゲノムには3Rmybをコードする遺伝子が5個あり(MYB3R-1からMYB3R-5)、それらのT-DNA挿入破壊株の解析を進めている。各々単独の破壊では明瞭な表現型が見られなかったため、いろいろな組み合わせでかけあわせることにより二重破壊株を作成した。そのうち転写活性化因子として働くタバコのNtmybA1, NtmybA2に構造的によく似た二つの遺伝子(MYB3R-1MYB3R-4)の破壊により、サイトキネシスの欠損に起因すると考えられる以下のような表現型が得られた。(1) 孔辺母細胞の細胞質分裂の異常が原因と考えられる特徴的な気孔の形態異常が高頻度で認められ、(2) 表皮細胞においてギャップのある細胞壁や細胞壁の小断片、および多核化が観察された。細胞質分裂に必須なタバコのキネシン様タンパク質をコードするNACK1遺伝子が3Rmybの標的遺伝子であり、タバコにおいてG2/M期特異的に発現することを我々は既に報告しているが、今回観察されたシロイヌナズナの表現型はこれと符合するものである。
著者関連情報
© 2004 日本植物生理学会
前の記事 次の記事
feedback
Top