抄録
サイクリンDは増殖シグナルのセンサーとして機能し、動物では活躍の場は主にG1期に限られる。シロイヌナズナでゲノム解読が完了した結果、サイクリンDは合計10種と動物の3種に比べ多数存在し、中には特徴的な機能の1つであるRbとの結合配列(LxCxE)を持たないものもある。現在までの解析からタバコサイクリンDはin vitroで G2期からM期に特異的に発現するCDKBと結合しその複合体が活性を持つ事が示され、サイクリンDがG2/M期移行も制御する可能性が示唆された。
サイクリンDの主要なターゲットはRbと考えられ、Rbにより転写因子E2Fが制御されている。タバコRbにはサイクリン/CDK推定リン酸化部位が13箇所存在し、低リン酸化状態でE2Fと結合して転写を抑制するが、高リン酸化状態ではE2Fから解離される。本研究ではG2期からM期に周期依存的に発現する2種のタバコサイクリンD3(CycD3;1a, CycD3;1b)と周期を通じて一定に発現しG1/S期移行に関与する事が示唆されているCycD3;3を特異的に認識するペプチド抗体を作製し、これを用いて各サイクリンDによりリン酸化されるRbのリン酸化部位の同定を行い、サイクリンDとその下流因子Rbとの関連を解析した。