抄録
短日植物であるイネにおいて光周性反応の分子機構を明らかにするために、イネFTホモログであるHd3a遺伝子の発現調節機構の解析を行った。イネFT遺伝子ファミリーに属するHd3a (FTのイネ相同性遺伝子) は短日条件下では発現が上昇し、長日条件下では発現が抑制される事が明らかとなっている。またこの遺伝子の発現調節には、Hd1 (COのイネ相同性遺伝子) が関与している。イネプロトプラストにおいてHd3a遺伝子のプロモーター領域にgus遺伝子を連結したキメラ遺伝子が、Hd1遺伝子の存在下では発現が抑制される事を明らかにした。このHd1による発現抑制は、他のFT遺伝子ファミリーであるFTLのプロモーター領域においても確認された。現在、Hd3aのプロモーター領域においてHd1が作用する領域を詳細に解析中である。次にFT遺伝子ファミリーのプロモーター領域にgusを連結したキメラ遺伝子を野生型および日長非依存的な早咲きを示すse5変異体に導入し、その発現部位を解析した。その結果Hd3a :: gusを導入した野生型ではGUSの発現部位が、葉身の維間束周辺に特異的に発現するが、se5変異体においては葉身における発現部位が維間束周辺のみでなく葉肉細胞においても観察される事が明らかとなった。