抄録
絶対的短日植物であるアサガオの品種紫(Pharbitis nil cv. Violet)は、光周性花成誘導研究のモデル植物であり、播種後7日目の子葉の段階でも16時間の暗期を一回与えることにより花成を誘導できる。以前に我々は、蛍光ディファレンシャルディスプレイ(FDD)法を用い、花成誘導暗期特異的に発現が増加する遺伝子の単離を試み、青色光受容体Cryptochrome 1 (CRY1) のホモログであるPnCRY1 (Pharbitis nil Cryptochrome 1)を単離し、解析を進めていた。しかし、シロイヌナズナにおいては、青色光による花成促進にCRY2が主要な役割を果たすことが知られている。そこで今回我々は、CRY2 のホモログであるPnCRY2を単離し、解析を行った。PnCRY2の全長塩基配列を決定した結果、この遺伝子は653アミノ酸から成るタンパク質をコードし、推定アミノ酸配列はトマトとシロイヌナズナのCRY2と比較して、70%程度の高い相同性を示した。PnCRY2の発現はPnCRY1と同様、約24時間周期のサーカディアン発現変動を示し、光照射によってその発現は抑制された。PnCRY1, PnCRY2 の光による発現抑制は、青色光のみでなく、赤色光によっても観察されたことから、両遺伝子の発現制御にはフィトクロムが関与していることが示唆された。