日本植物生理学会年会およびシンポジウム 講演要旨集
第45回日本植物生理学会年会講演要旨集
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マルバアサガオの八重咲き変異体に挿入しているHelitron様トランスポゾン
*仁田坂 英二岩崎 まゆみCaitlin Coberly
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p. 172

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抄録
アサガオの牡丹(dp)突然変異体では、CクラスMADS-box遺伝子であるDP遺伝子の機能を完全に欠損しており、生殖器官から萼や花弁への完全な転換を示すのに対し、マルバアサガオのflora pleno (fp)突然変異体では、雄ずいが花弁化し、雌ずいは太く萎縮し、しばしば先端が萼様組織に変化する。fp変異体ではアサガオの牡丹遺伝子のオーソログ(FP)の転写が見られず、FP遺伝子の第2イントロンに12.7 kbにおよぶ新規のトランスポゾン(Helip1)が挿入していた。このトランスポゾンは最近高等生物に多数存在することが明らかになったHelitronと非常によく似た配列を持ち、末端の配列も保存されていた。これまでHelitronが転移した例はほとんど知られていないが、この変異体はしばしば復帰変異を起こし、遺伝子構造も完全な野生型に復帰する。このようにマルバアサガオのfp変異体は高等生物に普遍的に存在するHelitronの転移機構に迫ることができる唯一のシステムである。fp変異体がアサガオの牡丹変異と比較して弱い表現型しか示さない理由として、fpの遺伝子構造からは正常なFP産物は作られそうにないが高頻度の復帰変異によってある程度の正常なFP産物が供給されている、もしくはマルバアサガオではFPだけではなくもう1つのCクラスMADS-box遺伝子であるPNのオーソログも重要な働きをしている可能性が考えられる。
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© 2004 日本植物生理学会
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