抄録
胚珠への花粉管誘導は植物の生殖に必須な現象である。花粉は柱頭で発芽し、花柱から胎座、珠柄を介して胚珠へと伸長する。その過程で花粉管誘導は、段階に応じて幾重にも制御されていることが示唆されているが、その分子実体はほとんど未解明である。我々は、花粉管における胚珠側からの誘導因子に対する受容体を単離するため、シロイヌナズナ花粉管における受容体型キナーゼの網羅的解析を行い、実際に花粉管伸長パターンに影響を与える遺伝子が単離できたので報告する。花粉管伸長培地上で発芽伸長させた花粉、無処理の花粉、花序からそれぞれ単離した全RNAについて遺伝子チップ(Affymetrix)を用いて遺伝子発現を調べ、比較結果から、花粉管で優勢に発現していた45受容体様キナーゼ遺伝子の機能解析を行っている。これらの遺伝子はシロイヌナズナの全ゲノム配列上に存在し機能していると予測された417受容体様キナーゼ遺伝子の約9%を占め、細胞外ドメイン構造からクラス分けされた21グループのうち11に渡っていた。現在、T-DNA挿入による遺伝子破壊株、RNAiによる機能阻害株の雌蕊をアニーリンブルー染色し、雌蕊内部における花粉管伸長様式を野生型と比較しており、実際に花粉管が十分伸長しない変異体候補を得たので報告する。