抄録
単細胞シャジクモ藻類ミカヅキモClosterium peracerosum-strigosum-littorale complexでは、性フェロモンを介した有性生殖機構が知られており、これまでに有性生殖期及び無性増殖期の細胞より3231のESTが取得されている。それらを用いてcDNAマイクロアレイを作製し、有性生殖進行に機能する遺伝子の検索を行った。+型及び-型細胞の混合培養開始後、経時的(2, 8, 24, 72 h)に回収した細胞からCy-5標識cDNAを合成し、シグナルを比較した結果、35種類の遺伝子(うち機能未知26種類)が、いずれかのステージにおいて5倍以上に発現上昇した。さらに、精製した性フェロモンを+型または-型細胞に投与した結果、ロイシンリッチリピートをもつものを含めて8遺伝子がPR-IP処理に反応して-型細胞で発現し、受容体型プロテインキナーゼをコードすると思われるものを含め14遺伝子がPR-IP inducer処理に反応して+型細胞で発現することも見出された。さらに接合時に発現上昇するが、フェロモンに反応しないものも11種類見られた。これらの他に、接合誘起前の段階で、+型細胞、-型細胞特異的に発現する10及び23種類の遺伝子の存在がそれぞれ確認された。現在、これらの有性生殖における挙動について、定量的real-time PCRを用いて解析中である。