抄録
アブシジン酸(ABA)は種子の成熟から植物体の乾燥や塩ストレスへの応答やその耐性の獲得まで、多岐にわたって働くことが知られている。しかし、ABA情報伝達経路およびその制御機構については未だ不明な点が多い。そこでABA認識の特異性が変化した突然変異体を得ることによって新たな知見を得ることを期待し、ABA類縁体を用いて遺伝学的手法によるABA関連突然変異体の単離を試みた。これまでにABA類縁体であるPBI-51(ARI)を用いてスクリーニングを行い、ABA高感受性変異体候補を得ている。今回は新たなABA類縁体である#18を用いた研究について報告する。ABAはシロイヌナズナの根の伸長を強く抑制するのに対し、この類縁体は根の伸長よりも地上部の生長を強く抑制する。既知のABA非感受性変異体であるabi1, 2, 3, 4, 5はこの類縁体に非感受性を示し、ABA高感受性変異体であるera1は高感受性を示すことから、この類縁体はABA情報伝達に作用すると思われる。またエコタイプ間でこの類縁体の感受性の違いを調べたところ、Wsは強い感受性を示し、LerはColやWsに比べて感受性が低下していた。この感受性の差はABAの感受性の違いとは必ずしも相関はなかった。現在この類縁体への感受性が低下した個体のスクリーニングを行っている。