日本植物生理学会年会およびシンポジウム 講演要旨集
第45回日本植物生理学会年会講演要旨集
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シロイヌナズナのDAD1類似遺伝子DALのジャスモン酸生合成における役割
*服部 一樹中村 研三石黒 澄衞
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p. 202

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抄録
ジャスモン酸(JA)は植物の病虫害抵抗反応に重要な植物ホルモンで、傷害により一過的に多量に生合成される。JAは葉緑体の脂質に含まれるリノレン酸から生合成されるが、シロイヌナズナの葉の葉緑体には平常時でも膜脂質に結合したJAの生合成中間体が多量に存在するとの報告があり、傷害時にはこの中間体を遊離させることでJAを急速に生成しているのかもしれない。リノレン酸にせよ合成中間体にせよ、膜脂質から遊離するにはリパーゼが必要である。我々はJA生成に関わるリパーゼとして開花直前の蕾で発現するDAD1を同定しているが、dad1突然変異体でも傷害によるJAの生成は見られることから、傷害誘導に関与するリパーゼは別に存在すると考えられる。そこで、このJAの傷害誘導に働くリパーゼの同定を目的として実験を行った。
 シロイヌナズナのゲノムにはDAD1に相同性を示す遺伝子が11個あり、そのうち6個(DAL1-DAL6)が葉緑体のリパーゼをコードすると推定される。発現解析の結果、DAL2, 3, 4 は傷害を与えた葉でも与えない葉でも発現していたのに対し、DAL6DAD1は傷害を与えた葉のみで強く発現していた。最も発現レベルの高いDAL3の遺伝子破壊株を単離して調べてみたが、傷害によるJAの生成に伴って発現するVSP遺伝子の発現量は野生型と同じであった。現在これらの遺伝子の多重突然変異体を作成して解析を進めている。DAL3タンパク質の細胞内局在部位の解析についても併せて報告する。
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© 2004 日本植物生理学会
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