抄録
トマト果実の成熟は、生長の中で強度に制御かつ高度にプログラムされているが、その分子機構に関しては不明な部分が多い。生化学および分子生物学的解析から、成熟を制御している内的因子としてエチレンが大きな役割を果たしていることが知られている。また、ジャスモン酸等のオクタデカノイド類は、新しい植物ホルモンとして、植物の病害抵抗性や、老化、成熟に深く関わっていると考えられる。トマト果実へジャスモン酸等オクタデカノイド類を処理すると、エチレン生成量の上昇を引き起こすことが報告されている。本研究では、トマト果実の成熟関連遺伝子群の発現に対するオクタデカノイド類の影響を明らかにすることを目的とする。
様々な成熟ステージの普通種もしくは成熟変異種のトマト果肉組織から、コルクボーラーによって果肉ディスクを作製し、蒸留水、もしくはエテフォン、ジャスモン酸メチルエステルで処理し、エチレン生合成系等成熟関連遺伝子について発現レベルを解析した。その結果、ジャスモン酸メチルエステル24時間の処理によって、LeACO1およびLeACS2遺伝子については、発現レベルの上昇が見られたが、成熟特異的に発現することが知られるLeACS4遺伝子の発現については、顕著な影響は見られなかった。