抄録
高等植物に広く存在するアラビノガラクタンタンパク質(AGP)は、細胞生長、細胞接着、細胞死といった現象に関与している植物のプロテオグリカンである。AGPは糖鎖の基本骨格としてβ-3,6-ガラクタンを有しており、重量の90%以上が糖鎖で構成されているが、糖鎖の詳細な構造や糖鎖が持つ生理的な機能については明らかにされていない。
我々は、AGP糖鎖の構造解析、機能解析に有効なツールとしてTrichoderma virideからエンド-β-1,6-ガラクタナーゼ(Tv6GAL)を、またダイコンからα-L-アラビノフラノシダーゼ(RsAraf)をクローニングした。RsArafはα-L-アラビノフラノシダーゼ/β-D-キシロシダーゼ活性を有しており、ダイコンより精製したネイティブなAGPからL-アラビノースを遊離する[1]。Tv6GALはアラビノフラノシダーゼ処理したAGPに作用し、β-1,6-ガラクトシル側鎖を分解する。アミノ酸配列解析からTv6GALは新規のファミリー5糖質分解酵素メンバーであることが明らかとなった[2]。現在、AGP糖鎖構造の改変が与える影響について解析するため、これらの遺伝子を高発現する組換えシロイヌナズナを作成している。
[1] Hata K. et al (1992) Plant Physiol. 100: 388-396
[2] Kotake T. et al (2004) Biochem. J. (in press)