抄録
植物細胞壁は多種類の遺伝子ファミリーにコードされる多数のタンパク質群の働きを通して構築されるダイナミックな細胞構造である。シロイヌナズナの全ゲノム配列が決定されたことで、細胞壁構築に関与する遺伝子ファミリーが多数同定されている。しかし、これらの遺伝子にコードされる細胞壁構築関連タンパク質群の機能はまだ明らかではない。我々は細胞壁の構築過程を解剖するために、シロイヌナズナの培養細胞を用いて1M KCl溶液で細胞壁タンパク質を抽出した。また、細胞壁構築過程で分泌されるタンパク質を解析するため、プロトプラストから細胞壁の再生を始めて1時間目及び3時間目の細胞からも、それぞれ1M KCl溶液により細胞壁タンパク質を抽出した。これらのタンパク質は、二次元電気泳動により分離とマッピングを行った。その結果、培養細胞では72個、1時間再生した細胞で176個、3時間再生した細胞で213個のKClで抽出される細胞壁タンパク質を検出した。これらのタンパク質をMALDI-TOF MSを用いて同定を行った。これらの解析結果を基にして、細胞壁の形成に関わるタンパク質の種類および細胞壁中での挙動について考察する。