日本植物生理学会年会およびシンポジウム 講演要旨集
第45回日本植物生理学会年会講演要旨集
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ジベレリンによる根の細胞壁蛋白質の消長
*谷本 英一林 弥智堤 竜生
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p. 246

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抄録
ジベレリン(GA)は根の成長を制御する。エンドウ(cv. Alaska)では,GA合成阻害剤・アンシミドール(Anc)存在下でGAが根の成長を促進する。成長には細胞壁の伸展性が必要で,根のGA誘導伸長でも細胞壁物性や多糖分子量などが変化することを我々は明らかにしてきた。本研究では細胞壁蛋白質の働きを調べるため,GA処理で変動する主要アポプラストタンパクを網羅的に探索した。
 エンドウの根細胞壁分画から,塩で溶出されるタンパクをSDS-PAGEで分析した。GAおよびAnc処理で変化する主なバンドの部分アミノ酸配列から,ホモロジーの高い既知タンパクを検索した。Anc処理とGA+Anc処理とを比較し,バンド強度の異なる11種のタンパクのうち,8種の部分アミノ酸配列が判明したので,ホモロジー検索によりそれらの機能を推定した。
 これらタンパクのうち,Pectin methylesterase(GAで↑)とPeroxidase(GAで↓)は細胞壁多糖の分子間結合に関与している可能性がある。変動したタンパクと相同性の高いデータベース上のタンパク13種のうち,少なくとも9種はシグナルペプチドを有していた。そのため,今回,根の細胞壁から抽出されたタンパクはアポプラスト由来で,細胞質タンパクの混入は少ないと考えられた。以上の結果から,ジベレリンはアポプラスト蛋白の量的制御を行っていることが示された。
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© 2004 日本植物生理学会
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