抄録
アズキ懸濁細胞は炭素源としてスクロースやグルコースを利用するがガラクトースとマンノースは利用できない。細胞に取り込まれたガラクトースはスクロース合成を強く阻害するがマンノースはこの作用がなく炭素源として認識されない可能性がある(井上,加藤2003年)。本研究は、マンノースで成長できないアズキ懸濁細胞とマンノースに順応したアズキカルス細胞を用いて細胞内スクロース濃度変化を調べた。またマンノース利用の鍵酵素と思われるホスホマンノースイソメラーゼ(PMI)の活性も測定した。まず懸濁細胞をマンノース液体培地で培養したがマンノース順応細胞は得られなかった。これらはマンノースをスクロースに転換できないため細胞内スクロース濃度が減少していた。次に懸濁細胞をマンノース寒天培地に移植し長期培養したところ最初はほとんど増殖しなかったが約30日後には新しい細胞塊が出現した。これに先立ち細胞内スクロース濃度が増加することも確認した。従って、カルス細胞はマンノースからスクロースを合成する新たな経路(酵素)を誘導することによりマンノース培地に順応すると考えられた。そこで、マンノース6リン酸をフルクトース6リン酸に転換するPMIの活性を測定した。その結果、エイジとともにPMI活性が増大することがわかった。しかし、スクロース培地で培養したカルスでも類似した酵素活性が検出されたので他の転換酵素についてもさらに調査する必要がある。