抄録
SnRK2ファミリーは酵母のSNF1プロテインキナーゼと相同なキナーゼドメインを持ち、植物に固有のプロテインキナーゼである。近年、SnRK2ファミリーに属するプロテインキナーゼが、アブシジン酸(ABA)シグナルの重要な中間因子であるという報告が相次ぎ、その役割が注目されている。我々は、シロイヌナズナSnRK2ファミリー(SRK2A~J)を網羅的に解析するために、GFPとの融合タンパク質を過剰発現させた培養細胞(T87)を作製した。この細胞を用いてゲル内リン酸化反応を行ったところ、SRK2Cが浸透ストレスおよび低温ストレスによって活性化されることを見いだした。植物における遺伝子発現をノーザン解析によって調べると、SRK2Cは根に多く発現しており、低温ストレスによって発現が誘導されることが明らかとなった。続いて、SRK2C-GFPを過剰発現させた植物を作製したところ、抽臺・開花遅延の表現型が認められ、凍結耐性および乾燥耐性を示した。この過剰発現植物では、ストレス応答性遺伝子の発現量が増加しており、このことが耐性獲得に寄与していると考えられた。以上のことから、SRK2Cはストレス時におけるシグナル伝達を正に制御するプロテインキナーゼであると考えられる。