抄録
我々は、イネにコードされる10個のSnRK2ファミリーメンバー、SAPK1~10のすべてが高浸透圧ストレスによって速やかに活性化を受けること、ならびに、SAPK8, 9, 10はABAによっても活性化されること、さらにSAPKの高浸透圧ストレスおよびABAによる活性化はリン酸化を介して制御されていることを明らかにしてきた。今回、SAPKの構成的活性型変異体を作成する目的でkinase domainのactivation loopに対応する領域のセリンとスレオニンをアスパラギン酸に置換した種々の変異体を作成した。期待に反し、これらの変異体はすべて活性を失ったが、高浸透圧に応答したリン酸化を受けることに変化はなかった。このことは、高浸透圧ストレスおよびABAによるSAPKのリン酸化は自己リン酸化によるものではないことを示している。上流のSAPKリン酸化酵素キナーゼを同定する第一歩として、SAPKを基質としたin gelアッセイを行ったところ、いくつかのSAPKリン酸化活性を検出することができた。現在その詳細について解析を進めている。また、阻害剤を用いた上流因子の検討や、SAPKの標的基質に関する検討結果についても合わせて報告する予定である。