抄録
我々はこれまでに澱粉合成の鍵酵素と言われているAGPase large subunit (AGPL)の発現が、イネカルス中で糖の添加によって上昇することを報告した。その一連の研究の中で、アブシジン酸(ABA)に対するAGPLの発現応答を調べたところ、ショ糖(Suc)と同時に処理した場合、Suc単独の場合よりも5倍程度発現量が増加することを見いだした。ABA単独では発現量に変化は見られず、この応答はSucと協調的であると推測された。ABAは糖シグナルと密接な関連があることで知られている。そこで、AGPLと同様に発現が誘導される遺伝子を網羅的に調べることで、澱粉合成初期の調節のメカニズムに迫れないかと考えた。今回は、遺伝子の発現量の微弱な増減を検知することが可能なcDNA-AFLP法を用いて、同条件下で発現量が増加する遺伝子の単離を試みた。検出された約一万本のバンドの解析から、SucまたはABA単独では発現量に変化がないものの、同時に処理した場合のみに増加したものが80個あった。その中にはRice Branching Enzyme 4、Sucrose Synthase 3、Hexose Transpoterといった、澱粉合成や糖代謝に関連する遺伝子が含まれていた。