抄録
アフリカ・カラハリ砂漠の野生種スイカは、強光乾燥ストレスに対する耐性能力が高いC3植物である。この葉組織において強光乾燥条件下で発現誘導される遺伝子をディファレンシャルディスプレイ法により探索し、動物のシトクロムb561と配列相同性を有するCLCyb561-AのcDNAを単離した。またCLCyb561-Aと相同性を持つ、CLCyb561-BのcDNAをdegenerate PCR法により単離した。ノザン解析の結果、強光乾燥ストレスでCLCyb561-A遺伝子の発現が短期間に強く誘導されるのに対し、CLCyb561-B遺伝子の蓄積量は徐々に減少していた。しかしCLCyb561-Bタンパク質の蓄積量は、ストレス下で減少せず一定であることがウェスタン解析により明らかとなった。またGFP融合タンパク質を用いたところ、CLCyb561-A、Bは共に細胞膜に局在している事が示唆された。動物のシトクロムb561は副腎小胞に局在する膜貫通タンパク質で、ノルアドレナリン生合成に必要な還元力を小胞内に伝達する。これらの結果から、CLCyb561が強光乾燥ストレス下において、細胞内の余剰な還元力を細胞外へ散逸している可能性が考えられた。この仮説を検証するために、スイカ葉から調製したプロトプラストに光を照射した際に、細胞外へ伝達される還元力の測定系の構築を試みている。