日本植物生理学会年会およびシンポジウム 講演要旨集
第45回日本植物生理学会年会講演要旨集
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EST解析による野生スイカの乾燥応答遺伝子発現プロファイリング
*明石 欣也橋詰 利治山下 敦士藤 英博服部 正平横田 明穂
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p. 268

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抄録
アフリカ・カラハリ砂漠に自生する野生スイカは、乾燥強光耐性に優れるC3型植物である。その分子耐性機構を理解するため、EST解析により乾燥強光ストレス下での遺伝子発現を包括的に理解することを試みた。乾燥強光ストレス前、ストレス1日目、3日目の野生スイカの葉組織より3種類のcDNAライブラリーを構築し、これまでに合計で約4,900のEST配列を得た。それらは約2,900種のクラスターに分類され、そのうち約60%はアラビドプシスのゲノムに相同配列を有していた。各ライブラリーに高頻度で出現するESTの比較から、葉における遺伝子発現の大規模な変化が見られた。光化学系のサブユニットをコードする遺伝子群は、ストレス前の葉に由来するESTから高頻度で見られたが、乾燥強光ストレスにより顕著に出現頻度が減少していた。それに対し、ストレス葉に由来するESTのうち最も出現頻度が高いものは、60アミノ酸残基のタンパク質をコードし、植物3型のメタロチオネイン様タンパク質と高い配列相同性を有していた。そのEST出現頻度はストレス葉由来のESTの約5%を占めていた。ノザン解析により、この遺伝子の発現が乾燥強光ストレス下の葉において顕著に誘導されることが確認された。植物3型メタロチオネインの乾燥強光ストレス下における高誘導は報告例がなく、酸化ストレス耐性における役割を考えると興味深い。現在、さらに多種類のcDNAライブラリーを用い、EST配列情報の拡充を図っている。
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© 2004 日本植物生理学会
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