抄録
ヒラドツツジ (Rhododendron mucronatum) は我が国において広く用いられている街路樹の一つである。二酸化窒素 (NO2) でヒラドツツジを暴露し、暴露葉から抽出したタンパク質を二次元電気泳動法を用いて解析したところ、germin-like protein (GLP) のレベルが高まること (5-6倍) が示された。GLP は細胞外に分泌される植物に普遍的な糖タンパク質で,4つのサブファミリーからなる巨大なタンパク質ファミリーを形成している。GLP には酵素活性を有しているものや,ストレスによりその発現が誘導されるものが知られているが、その生理機能については未だ明らかでない。NO2 暴露により同定されたヒラドツツジの GLP はそのアミノ末端配列からサブファミリー3 に属すると推定される。
今回、このタンパク質の cDNA を得ることを目的として、そのアミノ末端配列をもとに作製したディジェネレートプライマーを用いて、GLP のクローニングを行った。その結果、2種類の全長 cDNA を得た。両者の推定アミノ酸配列は 77.7% の相同性を示したが、暴露葉から同定された GLP とは異なり、いずれもサブファミリー2に分類された。これらの GLP 遺伝子の NO2 暴露に対する転写応答を competitive RT-PCR 法により解析したところ、いずれの GLP も NO2 暴露により mRNA が 1000 倍誘導された。現在、NO2 暴露による GLP タンパク質レベルの変動について解析を行っている。