日本地理学会発表要旨集
2022年度日本地理学会春季学術大会
セッションID: 241
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地理院地図のDEMを用いた厚い沖積層下の伏在活構造の検出
*小松原 琢佐藤 善輝
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抄録

1 はじめに  最近,杉中ほか(2018)は,段彩図を用いた詳細地形解析法を開発・報告し,佐藤 (2021) は,地理院地図の「自分で作る色別標高図」に対応する段彩図作成プログラムを作成・公開している.これらを「地理院地図」の高精度DEMに適用して段彩図を作成することにより,沖積面下の伏在活構造の位置を特定できないか検討した.

2 既知の構造に関する検討  水元ほか (2015) が指摘した石狩低地帯の沖積面の「高度異常」は,面的に把握することにより新生界の伏在背斜 (岡,1986) と調和的であることが追認された.松山断層 (庄内平野東縁:加藤ほか,2006) では,最上川と直交する南北~北東-南西走向で西傾斜の沖積面の高度異常が石油探査で想定されていた酒田衝上断層群上で認められる.しかし,仙台平野南部の伏在構造 (岡田ほか,2017) については,沖積面の高度異常は上記2例ほど明瞭には表れない.

3 新潟平野の断層に関する判読  新潟平野を対象に,0.5mピッチ段彩図から河川地形では説明困難な「高度異常」を抽出した(右図).長岡平野西縁断層帯沿いの高度異常は,既刊活断層図(石山ほか,2020;澤ほか,2020)とは位置が異なるが,沖積層基底の標高 (たとえば新潟県,2000) と矛盾しない.また,見附市市街には刈谷田川の流下方向に直交する比高数mの西北西傾斜の高度異常が認められる.これは,石油探査で求められた伏在背斜 (見附背斜) の西翼とほぼ一致する,

4 考察 沖積面の高度は,①沖積面形成 (離水) 時の微起伏,②地下水揚水・泥炭地排水等による地盤沈下,③地殻変動,等複数の要因に規定され,特に揚排水に伴う地盤不等収縮は地質構造と密接に関連するため,地質構造と調和的な高度異常でも活構造やその完新世活動を反映しているとは言えない.沖積面の高度異常のみで活構造は認定できないが,伏在構造のスクリーニングや詳細調査にあたっての探査位置決定に有用な資料となると期待される.

文献 石山達也ほか2020.1:25,000活断層図「弥彦」.加藤直子ほか2006.活断層研究,26,87-93.水本匡起ほか2015.地理予,87,272. 新潟県2000.新潟県地質図(2000年版).岡田真介ほか2017.地震,70,109-124.岡孝雄1986.地団研専報,31,295-320.佐藤善輝2021.佐藤善輝のweb site- AIST.澤祥ほか2020.1:25,000活断層図「三条」.杉中佑輔ほか2018.地球惑星科学連合大会2018年大会,HQR04-15.

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© 2022 公益社団法人 日本地理学会
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