抄録
イネのサイトゾル型グルタミン合成酵素(GS)は、それぞれ地上部と地下部から単離された、GS1とGSrが知られていた。イネゲノムのデータベースより、新規サイトゾル型GSが見つかり、GS1;3と命名した。また、従来のGS1をGS1;1、GSrをGS1;2と命名した。
RT-PCR解析を行ったところ、GS1;1、GS1;2 mRNAは、幼植物の根、葉鞘、未抽出葉身、完全展開葉身、老化葉身、開花後10日目の穎果全てに検出された。一方、GS1;3 mRNAは、穎果にのみ検出された。これらのアミノ酸配列の相同性は非常に高く、GS1;1抗体は全てのGS1分子種を認識していると考えられる。NipponbareのGS1;1遺伝子にレトロトランスポゾンTos17が挿入された遺伝子破壊変異体を用いて、イムノブロット解析および免疫組織化学的解析を行った。その結果、幼植物の根と完全展開葉身では、GS1タンパク質含量はNipponbareと比較して大きく減少していたが、組織内分布には顕著な差は見られなかった。開花後3、11、14日目の穎果では、背部大維管束篩部周辺のシグナルが消失したが、他の細胞群ではNipponbareと同様であった。変異体で検出されたシグナルは、GS1;1以外の分子種である可能性が考えられる。現在、それぞれの分子種の組織内局在性の解析をプロモーターを用いて進めている。