抄録
大腸菌などの細菌では、細胞内の炭素と窒素のバランスを検知して窒素代謝系遺伝子群の発現制御や翻訳産物の機能を制御する機構が存在する。この機構における主要因子の一つとして、PIIタンパク質が挙げられる。近年、シロイヌナズナからPIIホモログ遺伝子(GLB1)が単離されたことから、高等植物においてもPII様タンパク質を介した窒素代謝系制御機構が存在する可能性が示唆されているが、その詳細はほとんど明らかにされていない。そこで、演者らは、イネにおけるPII様タンパク質を介した窒素代謝系の調節機構の存在を検証することを目的とし、イネよりPII様タンパク質をコードするGLB1を単離し、その発現特性の解析を行なった。イネの葉より、5’, 3’-RACE法にてOsGLB1 cDNAを単離した。得られたcDNA配列情報と、ゲノム情報とを比較したところ、OsGLB1遺伝子は、第5染色体上に座上し、その構造遺伝子は、7個のエキソンからなっていた。さらに、サザン解析並びにデータベース検索の結果から、OsGLB1は単一の遺伝子と推定された。また、OsGLB1推定アミノ酸配列は、シロイヌナズナと74.5%の相同性を示した。RT-PCR法による発現解析の結果、OsGLB1の転写産物は、イネの根、葉、頴果において、その蓄積が認められた。