抄録
グルタミン合成酵素(GS)は、NH4+とグルタミン酸を基質とし、グルタミンの合成を触媒する。シロイヌナズナの根で発現する4つの細胞質型GS (GS1; GLN1;1、GLN1;2、GLN1;3、GLN1;4)の酵素特性を決定した。GLN1;1及びGLN1;4分子種は基質に対し高い親和性を示し、逆に、GLN1;2及びGLN1;3分子種は低い親和性を示した。GS1プロモーターGFP解析の結果から、無窒素処理により、NH4+トランスポーター(AMT)と同調的に、高親和型GLN1;1が、根毛、表皮に特異的に発現することが明らかとなった。低窒素条件下における根の表皮細胞では、高親和型のAMTとGLN1;1分子種が、NH4+の吸収、同化を協調的に行っていると考えられる。対照的に、NH4+過剰条件下では、内鞘細胞で発現する低親和型GLN1;2 mRNAの急激な増加が観察された。GLN1;3は、比活性が高い低親和型GSであるが、高濃度のグルタミン酸により活性が著しく阻害され、さらに、NH4+の供給により、mRNA蓄積量が減少した。以上の結果より、NH4+過剰条件下では、維管束において、根内部のNH4+濃度の上昇に適応した低親和型GS、GLN1;2、GLN1;3が制御されていると考えられる。