抄録
頂芽は側芽の生長を阻害することが多くの植物種で知られているが、そのメカニズムは明らかではない。我々は芽の休眠機構を解析するために、Affymetrix社のシロイヌナズナ全遺伝子からなるDNAチップを用いて、休眠腋芽と主茎除去後24時間目の腋芽での遺伝子発現を比較した。チップ上の約23000個の遺伝子の中で、AtDRM1を含む1678個の遺伝子発現は主茎除去による低下が見られた。また1188個の発現が上昇した遺伝子群には細胞分裂や蛋白質合成に関わる遺伝子が含まれていた。in silico解析から、発現量低下に関わるsugar-repressive element (SRE)と発現量上昇に関わるUp1-とUp2-boxの3個のシス因子が得られた。これら因子のin vivoでの機能を調べるために、それぞれの因子を3つtandemに繋いだ人工プロモーターGUS融合遺伝子をもつ形質転換体植物を作成した。組織化学的にその発現を調べた結果、3つの因子が実際に腋芽休眠とその生長に伴って遺伝子発現を制御していることが示された。SREは糖による発現抑制に関わっており、主に休眠腋芽での代謝関連遺伝子の発現を制御している。一方2つのUp-boxは共に腋芽生長に伴う蛋白質合成の促進に関わっていると考えられる。この3つの因子による腋芽休眠とその生長のメカニズムについて議論を行う予定である。