抄録
我々はイネにおけるα-アミラーゼ多型発現の生理的役割に関する研究を進めている。イネα-アミラーゼには多くのアイソフォームが存在し、発芽種子及び胚由来のカルスから11種類のアイソフォームが同定され、酵素学的諸性質が調べられている。その一つであるα-アミラーゼI-1 (RAmy1A) は、発芽イネ種子の胚盤上皮細胞およびアリューロン層において活発に生合成・分泌されるN-結合型糖鎖を有する糖タンパク質であることが示されている。本報告においてはα-アミラーゼI-1に着目し、35Sプロモーターとα-アミラーゼI-1 cDNA遺伝子を融合したコンストラクトを作製し、アグロバクテリウム法によるイネの形質転換を行った。得られた形質転換体は外来遺伝子2~5コピーを持っており、その大部分においてサイレンシングによるmRNAおよびタンパク質レベルにおけるα-アミラーゼI-1の発現抑制が見られた。α-アミラーゼI-1が抑制された系統は正常イネと比べ発芽、伸長生長が著しく抑えられたが、ショ糖を加えることによって正常イネと同様な発芽、伸長生長を示した。さらに興味深いことに発芽5日目の形質転換イネの第2葉の根元において顕著なデンプンの蓄積増加が見られ、α-アミラーゼI-1が第2葉のデンプン蓄積・分解に関与しているのではないかと考えられた。