日本植物生理学会年会およびシンポジウム 講演要旨集
第45回日本植物生理学会年会講演要旨集
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不定胚誘導時に発現する NAC domain 転写因子 No Apical Meristem-like 1 (NAM-like 1) の単離と解析
*加藤 孝春菊池 彰鎌田 博
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p. 311

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抄録

高等植物は、一度分化した体細胞であっても、特定の条件下で胚発生を開始することができる。こうした体細胞不定胚形成は、植物の持つ分化全能性の直接的な証拠として知られている。しかし、体細胞が胚発生を起こす細胞へと変化する機構についてはほとんど明らかにされていない。
ニンジンストレス不定胚誘導系では、形態的に変化が見られないストレス処理中にすでに胚発生関連遺伝子が発現していることが知られており、ストレス処理および未処理の外植片の間で遺伝子発現の比較を行うことにより、胚発生プログラムのきわめて初期に働く遺伝子の単離が可能であると考えられる。そこで、シロイヌナズナマイクロアレイを用いて遺伝子発現を比較し、ストレス処理時に発現が増加する遺伝子の選抜を行った。その中から、発生初期の種子胚を含む花で発現量が増加するNAC domain転写因子、No Apical Meristem-like 1(NAM-like 1)を見いだした。GUSレポーターによる発現部位の解析から、このNAM-like 1遺伝子は不定胚自身での発現は認められないものの、不定胚形成能力を有するカルスで発現することが明らかとなった。また、過剰発現体においては、抽苔後、花茎の付け根に形成されるシュートの数が増えるという表現型が観察された。こうした特性を示すことからNAM-like 1遺伝子は、形態形成を促進する機能を有していることが推測され、また、形態形成に先んじて発現する因子であることが考えられる。

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© 2004 日本植物生理学会
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