日本植物生理学会年会およびシンポジウム 講演要旨集
第45回日本植物生理学会年会講演要旨集
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ニンジン不定胚におけるゲノムDNA複製開始領域の可視化
*村田 夏子野村 港二
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p. 315

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抄録
ニンジン (Daucus carota L.) の不定胚形成初期に,同調的に多数の開始点からDNA複製が行われるため,レプリコンサイズが小さくなることが1981年に藤村らによって本学会で発表されている.私たちは,この系を用いることで,植物の複製開始領域をクローニングすることが可能であると考えた.そこで,観察とともに回収が可能な方法として,複製領域をブロモデオキシウリジン(BrdU)で標識することを試みた.まず,DNA合成が活発に行われる時期を特定するために,培地30mlあたりの全細胞についてDNA量増加のタイムコースを調べた.培養細胞を,オーキシンを含まずゼアチンを含む培地に移植し,不定胚形成を誘導してから5日目の前後でDNAが急激に増加した.そこで,不定胚誘導後0日目,2日目,5日目,8日目の細胞にBrdUを15分間処理することでパルス標識を行った.その後,細胞質DNAの混入を防ぐために,細胞から核を単離し,スライドグラス上にDNA繊維を展開した.BrdU標識部位は抗BrdU抗体と蛍光標識した抗体によって可視化した.これを蛍光顕微鏡で観察し,標識間の距離を計測したところ,レプリコンサイズの平均は0日目が35.2μm,5日目が24.2μmであり,球状胚が形成される時期にレプリコンサイズが短くなることが確認された.この結果は1981年の藤村らの研究結果と一致した.また,この技術を用いて,レーザーマイクロダイセクションによる,DNAの標識された領域の切り出しを行った.
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© 2004 日本植物生理学会
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