抄録
シロイヌナズナのeye(embryo yellow)変異体は、胚軸や子葉の表皮細胞が丸く、茎頂部からは非周期的に葉原基を形成するという特徴を持つ。また、eye変異の原因遺伝子は、T-DNAを指標にクローニングされ、ホニュウ動物においてゴルジ体の形態や機能の維持に関わっているCOG複合体の構成因子の一つと相同なタンパク質をコードしていると予測された。このことからeye変異体では、ゴルジ体の機能が低下していると推察され、細胞が正常な形を示すためや茎頂分裂組織において適切な位置から葉原基が形成されるためには、 COG複合体によりゴルジ体の機能が正常に維持されることが必要であると考えられた。次に、eye変異体においてゴルジ体の形態や機能に異常がみられるかを解析するため、ゴルジ体マーカー AtERD2-GFPのeye変異体における細胞内局在を観察したところ、GFPの蛍光は主にERから検出された。この結果から、eye変異体では、AtERD2-GFPはERからゴルジ体に輸送されていないと考えられた。このことから、EYE の機能について以下の2つの可能性が推察された。(1) EYE は ERからゴルジ体への小胞輸送に直接関与している。(2) EYE はゴルジ体の機能維持に関与しており、eye変異体では、ゴルジ体が正常に機能しなくなったために ER からゴルジ体へのタンパク質の輸送が異常となった。今後は、この二つの可能性について検証していきたいと考えている。