抄録
IAAタンパク質はオーキシンのシグナル伝達系路で働く転写調節因子である。昨年の大会でオーキシンの非感受性突然変異体axr2/iaa7はブラシノステロイド(BR)感受性と内生量が異常になっていることを報告した。今回は、axr2/iaa7, axr3/iaa17変異体におけるBR応答性遺伝子発現について主に調べた。IAA5, IAA19のオーキシンとBRによる発現誘導はaxr2, axr3において共に阻害されていた。このBRによる誘導阻害は播種後7日目の芽生えで観察されたが14日目では観察されなかった。axr2ではSAUR-AC1遺伝子のオーキシン誘導は阻害されていたがBR誘導は正常であった。さらにpSAUR-AC1-GUS形質転換体を用いて解析すると、axr2ではBRによる発現制御は下胚軸でのみ失われていた。この結果はBRによる胚軸の伸長促進がaxr2において失われていることと一致した。BR生合成遺伝子の発現は7日目のaxr2で野生型植物(WT)よりも全体的に高くなっていたが、20日目には生合成鍵酵素であると考えられているDWF4及びBR6ox2の発現はWTと同じレベルに戻っていた。一方、axr2をGeneChipを用いて解析し、AXR2遺伝子により制御される遺伝子群を同定した。これらの結果からAXR2はBR応答性遺伝子を遺伝子毎に生育段階に依存して器官特異的に制御をしていると考えられた。