抄録
イネ矮性突然変異体dal1は、矮性形質と同時に葉身先端が丸みを帯びる形態異常を示す。本変異体の解析を目的として、まず初めに原因遺伝子を単離するために、ポジショナルクローニングを行った。その結果、本遺伝子を2つの分子マーカーにより約40kbの範囲内に限定することに成功した。この範囲には微小管切断活性を持つカタニン (katanin)様タンパク質が存在していたので、この遺伝子に注目し変異体アリルについてシーケンスを行ったところ、ATP結合部位と推定される位置に1アミノ酸置換を導く突然変異が見つかった。またdal1変異体には、クローニングに用いたdal1-1以外に3つのアリル(dal1-2~4)が存在するが、これらのアリルにおいても本遺伝子に変異が見つかったことから、DAL1はカタニン様タンパク質をコードすると結論した。イネDAL1タンパク質は、既に単離されていたシロイヌナズナの矮性突然変異体fra2の原因遺伝子産物と高い相同性を示した。fra2は矮性形質と伴に茎が折れやすく葉に丸みを帯びる特徴を持ち、微小管とセルロース微繊維の配向性に異常を示すことが報告されている。イネdal1とシロイヌナズナfra2の形態的特徴や遺伝子構造の類似性から、イネdal1変異体はカタニンの異常が微小管の配向性を乱し、その結果、セルロース微繊維の配向性の異常を導くことで矮性かつ葉の異常を示す可能性が示唆された。