抄録
シロイヌナズナ耐塩機構を解明するために,耐塩性光合成生育突然変異系統pst (photoautotrohic salt tolerance) を選抜した (Plant Cell, 11, 1195-1206, 1999).これらのうち耐塩機構が未知のpst2について解析した.
無ストレス下で生育させたpst2および野生系統に対し,cDNAマクロアレイおよびオリゴマイクロアレイを行い,pst2において発現が高い遺伝子を特定した.この1つであるbHLH転写因子候補をリアルタイムRT-PCRで測定したところ,塩ストレス特異的に新たな増幅産物が得られた.これらのそれぞれの塩基配列を決定した結果,これらは選択的スプライシングによるものであることが判明した.RACEにより,この遺伝子の転写開始点は1箇所と予想された.塩ストレスで誘導されるmRNAは,2つ存在するイントロンのうちのC末側が正常に削除されずに残っており,残った領域に存在する停止コドンとそれに引き続く開始コドンにより,無ストレス下に合成されるタンパク質分子種が二分された形のタンパク質が発現することが予測された.塩ストレスの有無により発現するタンパク質分子種の差異をイムノブロット解析した.また,それぞれのタンパク質分子種を強制発現するシロイヌナズナ形質転換系統を作製した.これらを用いて,bHLH転写因子の機能および耐塩機構への関与を検討した.