抄録
植物は塩ストレスなどの環境ストレスによって活性酸素を発生する。活性酸素の発生に伴い、それを消去する抗酸化酵素の活性も上昇するが、カタラーゼ(CAT)については活性が低下することがある。CATはサリチル酸(SA)との結合により阻害されるという報告から、ストレスで蓄積したSAがCAT活性を低下させることが示唆された。よって、塩ストレス下におけるSA蓄積とCAT活性低下の関連性および、SAを合成する安息香酸2水酸化酵素(BA2H,チトクロームP-450の一種)の誘導・阻害機構を調査した。
イネのNaCl処理によるCAT活性の変化は処理濃度の増加に伴って経時的に低下していた。SA含量は処理1日目から処理濃度の増加に伴って増加しており、SAの蓄積とCAT活性低下に相関性が見られた。BA2H活性はNaCl処理によって1日目から上昇しており、塩ストレスによって誘導されることが明らかとなった。よって、BA2Hの活性化がSAの含量を増加させたと考察した。また、BA2Hの阻害が期待される各種薬剤のin vitroでの阻害効果は、ジベレリン合成阻害剤が最も阻害率が高かった。P-450の代謝標的である除草剤では、活性が誘導されていた。また、基質類似物による阻害率は低かった。よって、P-450の直接的阻害剤がBA2Hの阻害にも有効であることが示唆された。