日本植物生理学会年会およびシンポジウム 講演要旨集
第45回日本植物生理学会年会講演要旨集
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大気中NOxは植物ホルモン様シグナル作用をもつ
*高橋 美佐中川 真紀子小中 大輔坂本 敦松原 俊之大住 千栄子鈴木 仁美森川 弘道
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p. 390

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抄録
 NOxは化石燃料の燃焼や自動車の走行時に発生するガスで、大気汚染物質の一つであり、生物に害を及ぼすと考えられてきた。植物葉内に取り込まれたNOx由来の窒素の大半は還元態窒素まで代謝される。他方、ごく最近NOxは植物からも発生されることが報告された。大気中NOxは、植物にとってN源となるまたは害作用をもつことに関する報告はあるが、シグナル作用に関する報告はない。
 本研究では、Nicotiana plumbaginifoliaを100-200 ppb NOx存在下で数ヶ月間栽培し、バイオマス、葉面積、C、N、S、R、K、Ca、Mg、遊離アミノ酸、粗タンパク質含量を分析し、NOxフリー(NOx<5 ppm)で栽培した植物と比較した。その結果、いずれの量もNOxフリーで栽培した植物に比べ約二倍大きくなっていた。一方、NOxが植物葉中の全窒素に占める割合は、3-5%と非常に小さく、植物の全窒素に対するNOx由来の窒素の寄与は非常に小さく無視しうる程度であった。また、これらの現象は、施肥する硝酸態窒素濃度に関係なく観察された。これらの結果は、大気中NOxは植物ホルモン様シグナル作用をもつことを強く示唆するものである。
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© 2004 日本植物生理学会
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