日本植物生理学会年会およびシンポジウム 講演要旨集
第45回日本植物生理学会年会講演要旨集
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植物が作る未解明窒素化合物の解析
*森川 弘道高橋 美佐坂本 敦松原 俊之藤田 耕之輔鈴木 仁美
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p. 391

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抄録
我々は、植物に取り込まれた窒素酸化物(NOx)由来の窒素の約3割は、ケールダール法では回収できない未知の窒素化合物(Unidentified nitrogen:UN)になることを見いだした。この結果は、植物体内には未解明の窒素代謝経路が存在することを強く示唆すると考えられた。そこで、本研究では、硝酸態窒素からも同様なUNが生成するかについて、モデル植物であるタバコ、4種のマメ科植物のアカクローバ、シロクローバ、アルファルファ、レンゲとイネ科植物のエンバク、オーチャード、チモシーについて研究した。その結果、いずれの植物でもUNが検出された。UNを含む化合物(UN化合物)の候補としては、ニトロ、ニトロソ、アジド、ヒドラゾ、オキシム化合物などが考えられる。蛍光法によりS-ニトロソチオール含量を解析した。その結果、シロイヌナズナ葉を4 ppm NOx で暴露(4時間)すると、S-ニトロソチオール含量は約5倍増加することが分かった。また、抗ニトロチロシン抗体を用いたウェスタンブロット解析により、NOx暴露した植物において特異的バンドが検出された。これらの結果より、UN化合物の候補としてニトロ化合物やニトロソ化合物が考えられる。以上の結果は、UN化合物を生成する未解明の窒素代謝経路が存在するとの我々の仮説を支持するものである。
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© 2004 日本植物生理学会
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