抄録
過去の年会において、シアノバクテリアSynechocystis PCC6803の光合成色素であるクロロフィルの蛍光を測定することにより、光合成に直接関与しない遺伝子の欠損をも検出できることを報告した。先の研究では無作為な変異導入により遺伝子破壊株を作製したが、小さなORFが破壊される確率が低い、生育の遅い変異株は測定以前の段階で取りこぼしてしまうという欠点を持っていた。本研究では、特定の遺伝子を破壊することでゲノムワイドな破壊株セットを作製し、それらの蛍光挙動から多くの遺伝子について機能による分類を行なうことを想定している。12月の時点で、23の変異株を作製し、それらの蛍光挙動を測定した。その結果、野生株と明らかに異なる蛍光挙動を示すもの4株、わずかな違いを見せるもの5株を確認した。以前の手法では、野生株と異なる蛍光挙動を示した変異株は5%未満であったが、今回採用した手法では4割近くが野生型と異なる蛍光挙動を示した。今後は更なる遺伝子破壊株の作成を行い、蛍光挙動の測定することにより、遺伝子機能の分類が可能になると考えている。