抄録
好酸性紅色光合成細菌Acidiphilium rubrumはバクテリオクロロフィル(BChl)の中央金属のMgがZnに置き換わったZn-BChlを主要色素としてもつ。反応中心(RC)を精製し、蛍光アップコンバージョン法によりフェムト秒蛍光減衰過程を測定し、RC中の Zn-BChl二量体(P850)からBPhe(H)への電子移動速度を測定した。チタンサファイアレーザーの基本波(815 nm、半値幅180 fs)によりアクセサリーZn-BChl(B)を励起した。P850の蛍光の立ちあがりは160 fs、減衰は3.3psであった。前者はBからPへのエネルギー移動、後者はPからHへの電子移動を反映する。これらの時定数は通常のMg-BChlをもつ紅色細菌R.sphaeroidesとほぼ等しい。蛍光偏光解消からBとPの遷移双極子の角度は約32°と見積もられた(R.sphaeroides は36°)。また光子計数法によるピコ秒蛍光測定でLH1→RCのエネルギー移動速度は42psであった。A.rubrum RC内の電子移動速度とエネルギー準位の関係を議論する。