抄録
葉緑体遺伝子の転写、RNA成熟、安定化及び翻訳の各段階は、核コード因子により制御される。当研究室で単離されたシロイヌナズナ突然変異体pgr3には3つのアレルがあり、pgr3-2アレルはシトクロムb6f複合体のみ、pgr3-3アレルはNDH複合体にのみ表現型を示し、pgr3-1アレルは両方に対して異常を示した。PGR3は27個のPPR(Pentatrico Peptide Repeat)モチーフを持つ葉緑体移行タンパク質をコードしていた。PPRタンパク質の機能は未知であるが、現在までに解析されたPPRタンパク質は全てオルガネラRNAプロセシング、安定化、翻訳などの転写後制御に関与している。このことから、PGR3も転写後制御において何らかの機能をしていることが考えられる。PGR3の機能を明らかにする目的で葉緑体内での局在を調べたところ、チラコイド膜に局在していた。pgr3はpetL operon RNAの不安定化とおそらくpetLの翻訳の異常、さらには未同定ではあるが11のndh遺伝子のどれかの翻訳に異常があることを示唆する結果が得られている。以上のことからPGR3はチラコイド膜上で異なる標的RNAの安定化、翻訳に関与していることが考えられる。