日本植物生理学会年会およびシンポジウム 講演要旨集
第45回日本植物生理学会年会講演要旨集
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イネ病害抵抗性反応における細胞死調節因子 OsRac1 の発生における発現と機能
*森野 和子島本 功梅村 賢二岩田 道顕川田 元滋
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p. 432

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抄録

イネ OsRac1 は,活性酸素生成を介して,病害抵抗性反応時における細胞死を誘導する。このOsRac1 遺伝子のプロモーター領域にGFP を融合したコンストラクトをイネに導入した。その結果,葉身において,いもち菌接種やいもち菌由来のエリシターにより GFP 発現誘導が観察された。また,未成熟根における側根の発生部位や分けつ芽など組織・器官特異的発現が観察された。未成熟根横断切片での OsRac1::GFPの発現解析を行ったところ,側根発生予定位置と考えられる母根の中心柱,外皮細胞,皮層細胞の一部の細胞及び側根原基で発現が観察された。また,DAB 染色により,OsRac1::GFPの発現細胞で,H 2 0 2 生成が検出された。NADPH オキシダーゼの阻害剤 DPI 処理を幼植物体に6時間行った結果,母根からの出根前に一部の細胞が死んでいる側根原基や,母根内部でねじれている側根原基が観察された。1アミノ酸置換により,恒常的活性型に改変した OsRac1遺伝子を OsRac1プロモーターに融合し,イネに導入したところ,初期の根は,現品種と比較すると著しく短く,側根の発生が抑制された。また,強い表現型を示す系統では,本来休眠している伸長茎部の分けつ芽が活性化された。以上の結果から,OsRac1は,活性酸素生成を介して発生におけるシグナル伝達系を調節していると考えられた。

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© 2004 日本植物生理学会
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