抄録
シロイヌナズナの根の表皮細胞は根毛細胞と非根毛細胞のいずれかに分化する。この細胞分化に関わるCAPRICE (CPC)遺伝子は根毛細胞分化を正に制御するR3タイプのMyb遺伝子であり、その転写は非根毛細胞に特異的である。我々はCPCのプロモーターのデリーション解析等により組織特異的な転写に必要な約70 bpのシス領域を同定した。このシス領域を8個タンデムに連結させて最小プロモーターに結合させ、その下流にCPCのコード領域を連結し、cpc突然変異体に導入したところ、表現型を回復することができた。このことから、このシス領域はCPCの発現と機能にとって十分であることが明らかとなった。このシス領域にはMybタンパク質認識配列が二カ所含まれていた。下流側に位置するMyb認識配列に塩基置換を導入すると非根毛細胞特異的なプロモーター活性が検出できなくなった。根の表皮細胞分化に関わるR2R3タイプのMybタンパク質としてWEREWOLF (WER)が知られている。そこでWERタンパク質についてCPCプロモーターに結合するかどうかを酵母のone-hybrid法とゲルシフト法によって調べ、WERタンパク質のMybドメインがCPCプロモーターのシス領域に結合しうることを明らかにした。以上の結果より、CPC遺伝子発現におけるMybタンパク質の関与と細胞分化のシステムについて論ずる。