日本植物生理学会年会およびシンポジウム 講演要旨集
第45回日本植物生理学会年会講演要旨集
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円石藻のセレノプロテインの同定
*小幡 年弘白岩 善博
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p. 452

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抄録
 我々は海洋単細胞石灰藻である円石藻Emiliania huxleyiの増殖にセレンが必須であることを見出した。セレンはイオウの同族元素であり,ホ乳類等ではシステインのセレン体であるセレノシステインが,セレノプロテインと呼ばれるタンパク質の酵素活性中心に特異的に配置されることが知られている。そこで,本研究では円石藻E. huxleyiの増殖に対して必須性を賦与すると予測されるセレノプロテインの同定を試みた。
 E. huxleyi75Se-ラベルタンパク質をSDS-PAGEにより解析したところ,6種のセレノプロテイン(SEP1~6)を検出した。これらのタンパク質の部分アミノ酸配列を決定し, 最も多くの配列情報が得られたSEP2について,cDNAの塩基配列を決定した。相同性検索の結果,SEP2は多種生物由来のProtein disulfide isomerase(PDI)と相同性を示し,特にPDIの活性中心であるThioredoxin(Trx)ドメイン周辺における相同性が高かった。また,Trxドメインの活性中心であるシステインの位置には,セレノシステインをコードするTGAコドンが存在していた。以上の結果から,円石藻では,セレンがPDIの活性因子としてタンパク質の立体構造形成に関与する可能性が示された。セレン含有PDIはこれまでに報告が無く,セレンの新たな生体機能が示唆された。
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© 2004 日本植物生理学会
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