抄録
タバコ培養細胞BY-2に対して植物病原菌Alternaria alternataの培養上清を作用させると、細胞内外に複数のキチナーゼアイソザイムが誘導される。これらのうち、3種類の細胞内BY-2キチナーゼアイソザイム(TBC-1,2,3)を、熱処理、酸処理、コロイダルキチンアフィニティー、イオン交換、疎水クロマトグラフィーにより単離した。単離したTBC-1,2,3の分子量はそれぞれ28.8kDa、33.3kDa、28.5kDaであり、これらのN末端アミノ酸配列を解析した。さらに、得られたアミノ酸配列をもとにしてTBC-1 cDNAのクローニングを行い、831bpのORFと推定される配列を含む1013bpの完全長cDNA配列を得た。相同性検索を行った結果、既知タバコキチナーゼとは相同性が見られなかったが、他の植物のクラスIVキチナーゼと高い相同性を示した。この結果より、TBC-1は新規のタバコクラスIVキチナーゼであることが示唆された。またノーザン解析により、TBC-1遺伝子の発現は、A. alternata培養上清添加1時間後に誘導されることを見出した。