抄録
我々は現在までにイネのアクチベーションタギングライン約1万を作製し,その中で擬似病斑(lesion mimic)を示すLesion mimic 1(Lmm1)変異体等を得ている.Lmm1の変異形質は優性に遺伝し,エンハンサーを含むT-DNAとのリンクが認められており,T-DNA挿入部位の500bp下流にはORFが見いだされている。またこのORFをコードする遺伝子の転写レベルの高いものほど激しい擬似病斑の現れることも既に明らかにしている.この遺伝子は完全長cDNAライブラリー(Kikuchi et al., Science 301:376(2003))中に存在し、10以上のメンバーよりなるfamilyに属していた。また、タバコの過敏感反応が起こる際に誘導されてくるacyltransferaseと40-50%の相同性を示した。更にLmm1変異体では病害応答性遺伝子PR1及びPBZ1遺伝子の転写の活性化が認められ,フィトアレキシンのmomilactoneA及び sakuranetinの蓄積も認められた。そこでいもち病菌に対する抵抗性を調べたところ、噴霧接種法、パンチ接種法のいずれにおいても有意な抵抗性が認められた。以上より挿入エンハンサー下流のacyltransferase相同遺伝子が、generalな抵抗性反応に関与していることが強く示唆された。
本研究はイネ・ゲノムプロジェクトMP-1202により行った。