抄録
これまでに我々は、(1)UVBに感受性を示すイネ品種は、UVBによって誘発されるDNA損傷の一つであるシクロブタン型ピリミジン二量体 (CPD) を修復するCPD光回復酵素の活性が低下していること、(2)この酵素活性の違いは、CPD光回復酵素遺伝子の変異によることを見出し、イネのUVB感受性の差異は、CPD光回復酵素の遺伝子型およびその活性と深く関わっている可能性を指摘した。本研究では、イネのCPD光回復酵素活性の違いがUVB感受性の差異を引き起こす主要因となっているか否かを遺伝学的解析により検証することを目的とした。光回復酵素活性が高くUVB抵抗性を示す日本型ササニシキと、光回復酵素活性は低くUVB感受性を示すインディカ型サージャンキの交雑後代株(F2およびF3)を用いた。まず両品種間における酵素活性の違いは、光回復酵素のアミノ酸配列の違い(128および296番目アミノ酸)によることを、それぞれの大腸菌発現タンパク質を用いた解析から確認した。次にF2、420個体のUVB感受性試験を行なった。感受性の判定は、可視光にUVBを付加した条件下(1 W/m2)で生育させた後の第4葉の傷害程度(褐色の程度)を5段階に分けて行った。各F2個体を自殖させたF3個体を用いて、各F3系統のCPD光回復酵素遺伝子の遺伝子型と、染色体上での光回復酵素遺伝子近傍の多型解析を行った。その結果、CPD光回復酵素活性は、イネのUVB感受性の程度を決定する主要因であると結論した。